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■ 捺印性能の理論
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-マーキングインクの性能を左右する要因-
マーキングではインクの耐久性が重要とされている。インクは、捺印後硬化工程を経て固体状へと変化していくものであり、この硬化してインクはさまざまな環境、試験条件下で十分な耐久性を有さなければならない。インクの耐久性を劣化させる一般的な原因を以下にまとめた。
・ マーキング(捺印)条件に不適切なインクを使用
・ インクの配合の失敗
・ インク塗膜厚の不適切
・ 硬化不充分
・ 被捺印物表面の汚れ
インクと被捺印物表面との接着性、つまり、インクの耐久特性はマーキング、硬化工程においてインクと被捺印物との境界面やインク内部で発生する多くの要因によって決定される。
一般的にこれらの要因とは、インクと被捺印物との間で発生する物理的、科学的プロセスに用いるものである。例えば、半導体パッケージに使われているUVインクの接着性や対薬品特性には、以下に示した1、2と5が大きく性能に関与するものである。また、熱硬化性インクでは1から5のバランスの違いによって接着性や耐久性などの性能が左右されるものである。
以上を図1に解説した。
1.“ぬれ性”(ぬれ適性)
2.吸着性(科学吸着、物理吸着など)
3.浸透性
4.被捺印物との化学反応(架橋反応)
5.インク内部での重合、架橋反応
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“ぬれ”(wetting)
インクと被捺印物表面とが接触した瞬間に“ぬれ”という現象が発生する。通常、液体の表面張力は固体の表面張力よりも小さく、固体表面をぬらすことができる。逆の場合、つまり、固体の表面張力の方が液体の表面張力よりも小さい場合、液体はその固体の表面上で液滴となり、相手をぬらすことができない。これは固体に表面張力の小さいテフロンを用いて、その上に液体を乗せた場合に見られる現象と同じものであり、有名なYoungの式で証明されている。この場合、インクは必要な“ぬれ”を十分に得ることができず、接着も悪くなる。
十分な“ぬれ”を発生させるには、インクの粘度を下げることがある程度効果的だが、インクの粘度限界や他性能の関係から限度がある。その場合はインクの表面張力を低下させること、次に被捺印物表面の表面張力を大きくすることである。そのためにインク・メーカーは多くのインクの表面張力のデータを蓄積しているのである。被印刷物の表面張力は接触角の測定によって、おおよそ求めることができる。また、表面張力測定用の標準液体を用いて、算出する方法もある。しかしながら、インクの正確な表面張力の決定は非常に困難である。これは、インクを構成している顔料、フィラー、樹脂、溶剤、添加剤などの影響と、UV照射や加熱によるインクの粘性変化(硬化)などによるためである。
被捺印物の表面張力の測定は、表面の平滑性や汚染度によって影響されるため注意を要する。一見滑らかな表面でも、微細な凹凸があると粗い表面になってしまい、結果として実際の表面張力よりも大きくなるのである。つまり、インクと被捺印物との物理的接触にとって、表面平滑性は非常に重要となるわけである。被捺印物の“ぬれ”が適度であり、インクが表面の微細な凹凸に良く浸透することができれば、硬化工程によってインク膜と被印刷物との物理的結合を作ることができるのである。この種の物理的結合を発生させるため、意図的に表面を削って粗い表面を作り出している素材(被捺印物)も実際に多くある。 |
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| 被捺印物にマークされたインクの表面張力は、溶剤の蒸発などによる組成の変化が早いため一定の値にはならない。したがって当初十分に“ぬれ”を与えたインクでも溶剤の蒸発によって“ぬれ”減少や、“クローリング”(インク膜が縮んで粒状になること)を示すのである。初期の“ぬれ”を十分に得るための第一要因が溶剤組成であるならば、この影響は非常に重要となる。この“ぬれ”の減少は、初期の“ぬれ”が良く、その後溶剤の蒸発と、硬化初期段階での粘度変化を起こす熱硬化性インクに顕著である。図3に“ぬれ”に対するこれらの影響を解説した。溶剤の蒸発やインクの表面エネルギーの微妙な違い、またインク成分の高分子化の度合いがインクの“ぬれ”減少傾向に、多大な影響を与える。 |
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表面張力は便利で、インクの特性や性能を理解する上で重要なものである。が、表面張力にはさまざまな要因が含まれていることに注意を払わなければならない。また、表面張力のデータを活用できるのは、“ぬれ性”や接着性、マーク品質、耐久性などである。したがって、吸着現象からインクの性能を推測しようとする場合には、この表面張力のデータはあまり関係がない。以上のようにインクの性能を存分に発揮させるには、適度な“ぬれ”が重要となる。
パッケージ表面の汚れ
パッケージの表面特性とモールディングの条件はインクの“ぬれ性”や接着性、マーク適正へ大きな影響を与える。多くのデバイスは“低応力”と呼ばれるモールディング材で封止されている。このモールディングに使用されている素材は、外的環境変化(温度、湿度など)に耐えるように各種の添加剤を加えた、ノボラック・フェノール樹脂やノボラック・エポキシ樹脂が一般的となっている。通常使用されている添加剤にはシリコン・オイルやワックスが含まれていて、バルク(成型されていない塊状のもの)のモールディング材にミクロ的に分散された状態にある。このオイルやワックスは表面に向かって移行し、表面に堆積していくものである(図5)。特に長時間に及ぶ高温でのモールディングは、このような添加剤のパッケージ表面への移行や堆積を促進することになり、これによって表面張力の変化を引き起こすことになる。このような現象のほかに、パッケージ表面にはさまざまな不純物が付着している。例えば、シリコンやメラニンなどの離型剤である。図録には表面に付着したポリジメチルシロキサン(シリコン・オイル)から発生するフラグメント43(SiCH3基)の変化を、マス・スペクトルで測定した結果を示した。表面からおおよそ40から50オングストローム(数分子分の層)程度の深さに匹敵している。 |
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このような薄い膜を専門用語で”Weak Boundary Layer(WBL)”と呼び、インクやコーティングの不良の原因となる。これは工程条件やモールディング剤の種類にもよるが、数分子程度の厚さの層を表面に作るものである。応用力タイプや離型剤による表面汚染は、マークの耐久性や接着性、明瞭さに影響を与えてしまう。また、インクの乾燥、吸着、拡散、架橋反応などのプロセスでも、インクは被捺印物との間で充分な“ぬれ”を維持していなければならない。高品質のマークとその再現性を得るために、WBLの形成抑制や、除去を行う必要がある。
改善方法
多くの物理的、科学的試験、工程に対して低応力タイプのパッケージのマーク性能を維持、あるいは向上させるために、どのようにマーキング工程を改善すれば良いのか。最低限でも基材の表面洗浄が必要である。一般的に洗浄に使われている溶剤は、N-メチル-2-ピロリドンや1.1.1‐トリクロロエタン、テトラクロロエチレンのようなハロゲン系溶剤などであるが、これらの溶剤は綿密な環境上の調査の結果、ほとんど禁止されている。環境汚染や安全性、効力などの理由から被捺印物の前処理に好ましいのは、フレーム処理とされている。水素ガス炎の高温に基材の表面を瞬間的にさらすもので、表面洗浄や表面張力の向上が達成でき、マーキングインクへの充分な“ぬれ性”が与えられる。炎によるパッケージの変化やダメージは見られないが、表面の状態は確実に変化している。これを実験的に証明するのは困難ではあるが、非常に分子量の小さい付着物や不純物が気化してなくなるものと考えられ、さらにWBLも減少すると考えられる。しかし、最も重要な変化は被捺印物表面が酸化を受けていることである。つまり、水素ガス炎によって表面張力が増加し、そこに酸化された官能基が生成するのである。そして、被捺印物とインクとのなじみ(“ぬれ性”の向上)を良くするのである。また、インクと被捺印物との間に、より大きな吸引力を分子レベルで得ることができる。フレーム未処理のマークの品質と耐久性の低下の原因は、“ぬれ性”の減少によるものであり、また、フレーム処理の効果は一時的なものであること、そして、表面のWBLは非常に短い間に再生成してしまうことに注意しなければならない。
SIMSやX線などの光学分析で、低応力タイプのパッケージでフレーム処理したものと、未処理のものの表面分析を行い、興味深い見解を得ることができた。SIMS分析ではSiCH3基がシリケートに変化した酸化物を見いだした。表1に低応力パッケージでフレーム処理したものと、未処理のものの炭素原子、酸素原子、珪素原始の濃度比を示した。この結果から、フレーム処理の効果は表面の数分子膜程度に対してあるようである。これはSiCH3基の炭素原子の大きな減少と、珪素原始の酸化物への変化で説明がつくものである。表2には、酸化反応によるSiの3つの酸化物の量的比較をまとめた。
このようなシリコン(珪素)の酸化状態の増加は大きな表面張力を与える。多くの低応力コンパウンドは通常22-29 dyne/cmの表面張力を持っているが、フレーム処理によって45-52 dyne/cmぐらいまで表面張力が大きくなる。このような点からインクと、酸化を受けた被捺印物表面との間に非常に強い分子間引力が働き、その結果“ぬれ性”の改善と接着性の向上が図れるのである。 |
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UV硬化性インクと熱硬化性インク
熱硬化性も、UV硬化性も、その捺印性能は表面エネルギーの影響を多く受けているが、UV硬化性インクは特にこの影響を敏感に受ける。熱硬化性インクはゆっくりとした硬化反応(化学架橋反応)を行うため、硬化時の加熱が基材表面の温度上昇によって“ぬれ性”の向上を助け、またインクの粘度低下によって吸着や拡散をより進ませることができる。一般にゆっくりした硬化は、インクの膜形成に伴う体積収縮によるストレスを小さくする。これは硬化中に成長ポリマー鎖が充分に成長するのに、時間が必要であるからである。一方、UV硬化性インクでは瞬時に重合を行うため体積収縮を伴い、そのために被捺印物とインクとの間にひずみが生じてしまう。さらにこのようなひずみに加えて、WBLのような表面の汚れなどの要因が重なるのである。特にスクラッチテストやテープ剥離テストのような強い外力が加わると、弱い結合と高いひずみによってマークが剥がれるなどの不良が発生するのである。このようにUV硬化性インクは、多くの場合において熱硬化性インクより繊細で、複雑なインクといえるのである。
膜厚と硬化速度の影響
パッド捺印用のUVインクの接着性が、オフセット捺印用のUVインクに比べて比較的劣るという原因のもう一つは膜厚にある。パッド捺印ではインクは通常0.3から0.5milの膜厚でマークされるが、オフセット捺印のインクでは0.1から0.2milと薄い。耐化学薬品性や接着性を向上させるためには、被捺印物上のインク膜が完全に硬化していなくてはならないので、膜厚が約3倍もあるパッド捺印で、オフセット捺印並みの硬化を得るにはより大きなUVエネルギーを照射できるように硬化ラインを遅くする必要がある。パッケージをフレーム処理した場合、ライン速度が速いにもかかわらず、インクの接着性が飛躍的に向上するという結果を得た。
このようにUV硬化性インクの複雑さ、繊細さにもかかわらず、このインクの開発と需要を促す理由が多くある。UV硬化性インクは少ないエネルギーで、硬化が早く、また有機溶剤を使わないなど環境にやさしいという利点を多く持っているためである。これまでに経験してきた不具合や失敗などに学び、UV硬化性インクの組成改良や研究が盛んに行われている。また難しいとされている被捺印物への、接着強度の向上も図られている。しかしながらインク性能を最高に引き出し、プロセスの信頼性を得るためには、表面の汚れがなく、被捺印物の表面張力を可能な限り高くした状態で捺印することが、不可欠なのである。
まとめ
インクと被捺印物との相互作用やマーキング条件などを調べていくと、安定したマーク品質や耐久性を得るためには、最良のマーキングプロセスを見いだし、維持、コントロールしていかなければならないことが理解できた。半導体パッケージのマーキングプロセスで、最も重要な点を一つ取り上げるとすれば、やはり表面処理である。正しくコントロールした被捺印面の状態は、よいマーキングの再現性や耐久性に決定的な影響を与える。特にフレーム処理は被捺印表面の状態を一定に保ち、インクの“ぬれ性”、接着強度、マークの再現性を決定する重要な方法である。 |
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■ フレーム処理を現場で行うためには
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いままでの内容でフレーム処理がマーキング特性の向上に非常な効果をもたらすことをご理解いただいたと思います。しかし、実際の現場ではこのフレーム処理をどのように導入し、稼動させれば良いのかという疑問を感じておられる方が多いと考えます。弊社では、このフレーム処理を安全に効率良く行うことのできる設備のご提供が可能です。フレーム処理を行う装置を「バーニング装置」と弊社では呼んでおります。以下に、簡単ではありますがこの「バーニング装置」について説明させていただきます。
バーニング装置とは
バーニング装置は、前述してきましたフレーム処理を効率的に行う装置です。この装置は大きく3つのパートから構成されています。1つは水素ガス供給部、1つはSPキット(安全装置)、そして、バーニング部(トーチ)です。詳細については弊社営業担当までお問い合わせください。
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